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第1回 何が変わって何が変わらないのか 〜これからの演歌歌謡曲業界〜

僕の在宅ワーク歴はそこそこ長い。

作編曲でメシを食えるようになってから18年、その前の兼業音楽家時代が9年、計27年になる。

新型コロナウイルスのパンデミックが起きている現在も、特に生活スタイルは変わらない。

ただ、仕事がなくなった。

たぶん、在宅ワークで完結できる編曲家としてのオファーであったと思うが、3月に受注した仕事があったので、ありがたいことに4月の下旬までは仕事で忙しい日々を過ごすことができた。

今年は新年早々から例年以上の仕事の依頼があり、少々舞い上がっていたのかもしれない。

僕は同時に複数のことができないシングルタスクタイプで、その上深い集中で没頭して仕事をしてしまうので、仕事が切れてから我に返り、浦島太郎のような気分でふわふわした感じでしばらく過ごしていた。

ライフスタイルの変化がないので、自分ごととして受け入れるには、少々時間がかかった。

これから何が変わって、何が変わらないのか。

僕は、多くを語るほどの実績や地位はないし、音楽業界の特に演歌歌謡業界という狭いところでしか語れないが、そして大外れの連発かもしれないが、微力ながら、これから何回か続けて書いていこうと思っている。




ひとくちに音楽業界と言っても、演歌歌謡曲業界は他と違う「古い」構造で成り立っている。

世俗的伝統文化(たぶん僕の造語)なので「古さ」も重要な要素だ。



1、CDのセールス

某集団アイドルグループのようなミリオンセラーは出ないが、あまり知名度のない歌手やセミプロでも、2000枚から5000枚程度のセールスがあり、それなりに歌手やプロダクションやレコードメーカーにお金が回る仕組みがある。



2、ナイト店を中心としたカラオケ文化

ナイト店とは、ナイトクラブ、スナック、ラウンジ、カラオケバー、ガールズバー、ホストクラブ、キャバクラ、カラオケ喫茶(昼営業だが)、カラオケボックスなど、飲食と接客(ない店もある)とカラオケを楽しむ店の総称だ。

立場上あまり詳しくは書けないが、ナイト店自体の売り上げ、カラオケ事業会社の収益、歌手のナイト店営業などの収益とCDやグッズの売り上げ、著作権印税(特に音楽出版社)などの収益の積み重ねが、演歌歌謡業界全体を支えている。



3、カラオケ教室

趣味として、健康のため、またはプロへの夢をの実現のため、カラオケ教室に通う人は多い。

僕が入会している日本作曲家協会の会員のほとんどが、カラオケ講師や歌唱指導者でもある。

一つ一つの規模は小さくても全部をまとめれば、事業規模はレコードメーカー全体より大きいかもしれない。



4、カラオケ大会(カラオケコンテスト)

全国津々浦々で行われるカラオケ大会は、プロへの登竜門であり、カラオケ教室の発表の場であり、プロ歌手のプロモーションの場でもある。

その参加料の蓄積が、全国のカラオケ文化を支え、延いては演歌歌謡業界を支える事に繋がっている。

また、運営側から支払われる審査料が、作詩作曲家編曲家の収益の大きな柱になっている側面もある。

莫大な著作権印税収入のある作家は、ほんの1部のスター作家だけなのである。



5、全国津々浦々を巡業するコンサートツアー

ある程度の知名度のある歌手が行うコンサートツアーは、ファンの年齢層が高く遠隔地に足を運び難いので、全国津々浦々の公民館や市民ホールなどの中小規模のホールをきめ細かく巡業する。

その公演数は、J-POP系のアーティストでは考えられない回数だ。



6、歌番組

ホールなどで収録する、NHKのうたコン、のど自慢、新BS日本のうた、などのTVやラジオの歌番組は、直接の収益はあまり多くはないが、高い年齢層ほど届くメディアなので、プロモーションに果たす役割は大きい。



7、オーケストラの同時録音による原盤制作のスタイル

これは業界の収益というより、制作側(僕はこちら)の部分だ。

25名以上のミュージシャンによる同時録音は、それに適した大規模なレコーディングスタジオ、同録に特化したレコーディングエンジニア、ミュージシャンのコーディネートをするインペク屋、総譜の書ける編曲家、パートごとの譜面作りを行う写譜屋など、多くのスタッフが携わっている。



現在、上記の全てが止まっている。

全て、直接的にも間接的にもソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つことが困難だからだ。

また、スタジオやホールや教室は気密性の高い現場でもある。

加えて、ファンやリスナーの年齢性も高い。

「何が変わって何が変わらないのか」は、考えて考え抜くべきテーマだと思う。

ブレインストーミング気分で、ゆるゆると、お付き合い願いたい。


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