演歌に使われる意外な楽器と、僕の使っているその楽器のソフトインスツルメントの紹介だが、第4回は「
ブズーキ」だ。
「ブズーキ」とはギリシャの民族楽器で、ラウンドマンドリンのような洋梨を半分に割ったようなボディと、ボディに比べてかなり長いネックが特徴だ。
アイリッシュミュージックで主に使用される、ギターのようなフラットバックのボディの「アイリッシュブズーキ」という楽器もあるが、僕の知っているかぎりこちらは演歌では使われない。
演歌で使うには、音色が明るくドライ過ぎるようだ。
弦は4コース8弦のニッケルワウンド弦の複弦で、マンドリンのようにピックで弾き、トレモロ奏法も容易に弾ける。
「見た目はマンドリンの大きい感じで、音色もそんな感じかな」と思う人もいると思うが、その楽器は「
マンドラ」「
マンドロンチェロ」という楽器で、マンドリンのボディとネックのバランスで大きくなっている。
「ブズーキ」の特徴はボディがネックに対して小さめで、長い弦に対して充分に共鳴させきれないところに音色の特徴がある。
ボディの共鳴が少ないと、中低音の響きが少なくあまり音が伸びない。
そして金属弦の使用で鋭く金属的な音色である。
その音色が日本でしか使われないある楽器を連想させる。
そう、「
大正琴」である。
「
大正琴」は文字通り大正時代に発明された楽器で、奏法は左手でピアノの鍵盤を模したキーを押さえ、右手でピックを持ち弦を弾く。
2コース5弦で、1〜4弦は同じ弦を張り、5弦を曲調に応じて調弦する。
1、2、3、4弦の複弦をピックで弾くわけだが、1、2、3弦の1オクターブ下が4弦だ。
初めての人でも容易にメロディーが奏でられるということで普及したそうだ。
ボディが小さく、持ち運びは容易だがボディの共鳴はあまりなく、中低域の響きは少なく音もあまり伸びない。
三味線もそうだが、畳の上での日本の唄の伴奏は、共鳴や倍音の少ない楽器の方が相性が良い。
その理由は別の機会にでも書こうと思うが、今は単純にそういうものだ、と思っていただきたい。
「大正琴」の欠点として、音域が2オクターブで狭く、左手のキー方式は容易であるが、スライド、ビブラート、チョーキング、アルペジオ、コードストローク、などの奏法ができないことである。
音色は全く同じというわけではないが、「ブズーキ」はその欠点を補いつつ「大正琴」的な雰囲気も醸し出せるわけだ。
そして「ブズーキ」の圧倒的アドバンテージは、何と言ってもマンドリンでできることは全部できることであろう。
双方ともに、不器用な切なさを感じさせる音色であるが、最も重要なのは「大正ロマン」のイメージだろう。
三味線や箏ほど和風ではなく、ちょっとハイカラな和風という立ち位置は、演歌で使用される楽器では無二の存在である。
強いて双方の違いをあげれば、「大正琴」は舌足らずで素朴な感じ、「ブズーキ」は若干饒舌な感じである。
さて、「ブズーキ」はもちろん手練れのスタジオプレイヤーに演奏してもらうのが一番であるが、予算の関係で打ち込む場合、僕のお薦めは、
IMPACT SOUNDWORKS/PLECTRA SERIES1「8-Strings Acoustic Bouzouki」。
価格も現時点で59$とわりと手頃だ。
弦の選択が可能で、可能な奏法も多く、打ち込み甲斐のあるインスツルメントだ。
IMPACT SOUNDWORKSのインスツルメントに共通する特徴であるが、ロック的というか洋楽的というか、ちょっと音が野太い感じがあるが、イコライザーやコンプなどで音作りをすれば対応可能である。
ついでに「大正琴」のソフトインスツルメントもご紹介しよう。
VERSUS AUDIO/VS TAISHOGOTOVERSUS AUDIOは日本のベンダーで、他にもいろいろ興味深いインスツルメントを販売している。
音色は上品で柔らかい感じだが、良い意味での下世話さには欠けるように思う。
おとわび大正琴素晴らしいことに、フリー音源で無料である。
ただし、いろいろな奏法があったり、ベロシティーレイヤーがあったりはしない。
同じ音量で鳴るだけである。
しかし、それを補ってあまりある「下世話さ」が良い。
そして音色のヌケがよく、オケの中に埋もれない。
僕はケースバイケースで上記2つを使い分けている。
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